空き店舗を、町の入口に。宮田聖菜さんと畔柳知宏さんに聞く「空き店舗対策」のいま

空き店舗は、町に残された“余白”。そこから新しい商いが生まれるかもしれませんね!

今回、ツワノバコがお話を聞いたのは、地域おこし協力隊として「空き店舗対策」に関わる宮田聖菜さんと、建築・空き家活用の文脈からプロジェクトを支える畔柳知宏さんです。

場所は、津和野町商工会の2階。
かつて銀行だった面影を感じる大きな金庫の前で、空き店舗をめぐる新しい取り組みについて聞きました。

「空き店舗対策」と聞くと、単に空いている物件を紹介する仕組みのように思えるかもしれません。

でも話を聞いていくと、そこには、町に新しい商いを生み出すこと、移住や仕事の入口をつくること、そして“この町で何かやってみたい”という気持ちを受け止めるための準備がありました。


目次

空き店舗対策は、どう始まったのか

空き店舗って、ただの空き物件じゃなくて、町の可能性でもあるんだね。

津和野町で空き店舗対策の取り組みが動き始めた背景には、コロナ以降、町内で空き店舗が増えてきたことへの課題感があります。

新しくお店を始めたい人がいても、どこに空き物件があるのか、誰に相談すればいいのかがわからない。

一方で、空き店舗を持っている人も、どう貸せばいいのか、どこまで情報を出していいのか、迷いがあります。

そうした状況を受けて、商工会や役場、地域で空き家活用に関わってきた人たちの間で、「空き店舗対策が必要ではないか」という話が進み、地域おこし協力隊の募集につながりました。

そこに着任したのが、宮田聖菜さんです。

現在は、商工会や畔柳知宏さんと連携しながら、空き店舗に関する情報を集め、今後の仕組みづくりを進めています。

福岡から津和野へ。せなさんがこの町に惹かれた理由

最初のきっかけは、和紙と筆記具。そこから町に惚れ込んだんだって。

津和野の町並みを歩く宮田聖菜さん

宮田聖菜さんは福岡県出身。
前職では理学療法士として、病院やデイケアでリハビリの仕事をしていました。

津和野を知ったのは、実は10年ほど前。
筆記具や紙が好きだったことから、「和紙の町」として津和野のことを知り、ずっと心のどこかに残っていたそうです。

そして昨年、ふとできた2連休の朝に「そうだ、津和野に行ってみよう」と思い立ち、車で津和野へ。

町にあるゲストハウス”野窓”に宿泊し、町を歩き、太皷谷稲成神社や津和野城跡、安野光雅美術館などをめぐる中で、景色の美しさや町の人のあたたかさに惹かれていきました。

その後、転職を考えていた時期に、SNSで「空き店舗を蘇らせるプロジェクト」の募集を見つけます。

津和野の町を気に入っていたこと。
そして、初めて訪れた時から「空き店舗は多いけれど、可能性のある町だ」と感じていたこと。

その感覚と募集内容が重なり、「これは私にぴったりかもしれない」と思い、締切日の朝に滑り込むように応募したそうです。

畔柳さんが見てきた、空き家と空き店舗の現場

片付け、窓開け、相談。空き家活用って、地道な作業の積み重ねなんだね。

もう一人の聞き手である畔柳知宏さんは、2012年頃から津和野に関わってきました。

地域おこし協力隊として津和野に1年住み、その後も大学に戻りながら津和野に通い、集落支援員や町並み保存の活動などに関わってきたそうです。

専門は建築。
その視点から、空き家や空き店舗の相談に長く関わってきました。

空き家が活用されない理由を聞いていくと、「家が片付いていない」「仏壇がある」「遠方に住んでいて管理できない」など、物件情報だけでは見えてこない事情がたくさんあります。

そこで畔柳さんは、掃除や点検、窓開けなどを手伝う活動も行ってきました。

空き家や空き店舗の活用は、物件を紹介すれば終わりではありません。

持ち主の事情を聞き、使いたい人の希望を聞き、その間にある小さなハードルを一つずつ取り除いていくことが必要です。

今回の空き店舗対策でも、そうした経験をもとに、せなさんの活動をサポートしています。

いま進んでいること。空き店舗の調査と情報整理

まずは、町にどんな空き店舗があるのかを見えるようにするところから

地図を手に、町の空き店舗を一つずつ確認していく

現在、せなさんが取り組んでいることの一つが、町内の空き店舗調査です。

まずは実際に町を歩き、空き店舗を目視で確認する。
そして、町の人に話を聞きながら、物件の状況や持ち主との関係、活用の可能性を整理していく。

今は、そうした情報を少しずつまとめている段階です。

ただ、空き店舗は「空いているからすぐ使える」というものではありません。

建物の状態。
家賃や契約の条件。
持ち主の意向。
荷物や設備の問題。
情報をどこまで公開してよいかという安全面の判断。

決めなければならないことが多く、思っていた以上に難しいと、せなさんは話します。

それでも、町の人が情報を教えてくれたり、物件の持ち主につないでくれたりすることも多く、活動はしやすいと感じているそうです。

チャレンジショップという、商いの入口づくり

いきなり開業じゃなく、まずは試せる場所があると一歩踏み出しやすいよね。

空き店舗対策の取り組みの中で、もう一つ進められているのが「チャレンジショップ」です。

チャレンジショップとは、開業を目指す人や、津和野で何かを始めてみたい人が、いきなり本格的にお店を構える前に、お試しで商売をしてみるための場所です。

店舗を借りるとなると、家賃や契約期間、改修費、厨房設備など、最初から大きな投資が必要になることがあります。

でも、まずはチャレンジショップで試してみることができれば、

「どれくらいお客さんが来るのか」
「どんな商品が求められているのか」
「この町で商売を続けられそうか」

を、実際に感じることができます。

せなさんたちは現在、そのための物件や仕組みを準備している段階です。

商工会のネットワークを通じて物件の募集も行われ、候補も出てきているとのこと。契約や改修、補助金の活用など、具体的な準備が少しずつ進んでいます。

まずは小さく試し、仕組みをつくる

町全体に広げる前に、まずは近い範囲で試してルールをつくるんだね。

調査した情報を地図に落とし込み、町の状況を見える化していく

空き店舗対策は、いきなり町内全域で大きく始めるのではなく、まずは範囲を絞ってモデル的に進めている段階です。

津和野側の町中でも、調査できている範囲はまだ一部。
日原側にも空き店舗はあり、今後は調査していきたいと話していました。

ただ、空き店舗情報を扱うには、慎重さも必要です。

どの情報を誰に届けるのか。
持ち主の許可をどう取るのか。
防犯面のリスクをどう考えるのか。
商工会という立場で、どこまで関われるのか。

これまで津和野で本格的に取り組まれてこなかったからこそ、最初に決めるべきルールがたくさんあります。

だからこそ、まずは近いエリアで試しながら、情報の集め方、紹介の仕方、契約や改修までの流れを整理していく。

1年目は、空き店舗対策の仕組みを形にしていく大切な時期なのだと感じました。

空き家バンク、移住相談とのつながり

住む場所と働く場所は、別々じゃなくてつながっている話だよね。

空き店舗対策を考えるうえで、避けて通れないのが、空き家バンクや移住相談との関係です。

例えば、津和野に移住したい人が、住む場所だけでなく、生業をつくる場所も探している場合。あるいは、お店を始めたい人が、店舗だけでなく、住む場所も必要としている場合。さらには、住宅を改修して小さなお店を始めたいというケースもあるかもしれません。

つまり、空き家と空き店舗は別々の話ではなく、暮らしと仕事が重なるところにあります。

畔柳さんも、今後進む移住支援の取り組みと、空き店舗対策が連携することで、よりよい流れが生まれるのではないかと話していました。窓口が複数あること自体は仕方がないとしても、「こちらを見たら、あちらの情報にもたどり着ける」状態をつくることが大切です。

津和野で暮らしたい人。
津和野でお店を始めたい人。
津和野に関わりたい人。

そうした人たちが迷子にならない仕組みづくりも、これからの課題になりそうです。

SNSから始まる、空き店舗の伝え方

物件リストだけじゃなく、「ここで何ができそうか」まで伝えると楽しくなるね。

町の情報を共有しながら、次の使い方を一緒に考える

空き店舗の情報をどう発信していくかも、これからの大事なテーマです。

行政のホームページに物件情報を掲載するだけでは、なかなか物件の魅力や町の空気感は伝わりません。せなさんは、まずはSNSから軽い情報を発信し、興味を持った人が詳しい情報へ進めるような形を考えているそうです。

物件の写真だけでなく、

「こんなお店があったらいいな」
「この場所では、こんなことができそう」
「ここに来てほしい人は、こんな人」

というように、町側から少しイメージを出してみる。

いわば、空き店舗からの“逆指名”のような発信です。

物件情報をただ並べるのではなく、町の人がどんなお店を望んでいるのか、どんな使い方ができそうなのかを伝えることで、外から見た人も「自分なら何ができるだろう」と想像しやすくなります。

活動を通じて感じていること

難しさもある。でも、町の人のあたたかさが活動を支えているんだね

空き店舗が点在する町並みを歩きながら、これからの可能性を探す

半年ほど活動してみて、せなさんが感じているのは、空き店舗活用の難しさです。

空いている店舗はある。
けれど、すぐに使えるとは限らない。

持ち主の事情、建物の状態、荷物の整理、契約条件など、見えてくる課題はたくさんあります。

一方で、町の人はとてもあたたかく、情報を教えてくれたり、人をつないでくれたりすることが多いそうです。その意味で、コミュニケーションのしやすさは大きな支えになっています。

畔柳さんは、最近、津和野に新しく移住してくる人たちの関心の変化も感じていると話します。

これまでは農業や教育などの分野で移住してくる人が多かった印象がある中で、最近は「お店」や「店舗」に関心を持つ人が増えているように感じるそうです。空き店舗対策は、そうした新しい流れを受け止める入口にもなっていくのかもしれません。

これから、町の人にお願いしたいこと

空き店舗の情報も、やってみたい人の声も、どんどん集まると動き出しそう。

最後に、せなさんと畔柳さんから、町の人へのメッセージを聞きました。

まず、チャレンジショップをつくっていく中では、DIYや片付けなど、手伝ってほしいことが出てくるかもしれません。また、実際にチャレンジショップを使ってみたい人も大歓迎とのこと。

本格的に開業したい人だけではなく、

「週1回だけご飯を出してみたい」
「少しだけお店を試してみたい」
「こんなことをやってみたい人を知っている」

という声も、大切なきっかけになります。

また、空き店舗の情報についても、町の人からの情報提供が欠かせません。

持ち主を知っている。
昔お店だった場所を知っている。
使えそうな物件に心当たりがある。

そんな小さな情報が、次の商いの入口になるかもしれません。


今回のインタビューで印象的だったのは、空き店舗対策が単なる「物件紹介」の仕組みではないということです。

空き店舗は、町の中に残された“余白”です。

閉じたままになっている場所でも、誰かがそこで小さなお店を始めたり、週に一度ご飯を出したり、ものづくりの場にしたりすることで、町の景色は少しずつ変わっていきます。

けれど、その余白を使える状態にするには、地道な準備が必要です。

持ち主と話すこと。
建物の状態を確認すること。
情報をどう公開するか決めること。
お金や契約の条件を整理すること。
使いたい人が一歩踏み出しやすい場をつくること。

表からは見えにくい仕事ですが、この部分が整っていなければ、空き店舗はなかなか動き出しません。

せなさんの外から来た新鮮な視点と、畔柳さんの長く津和野に関わってきた経験。

その二つが重なることで、津和野の空き店舗が「困りごと」から「可能性」へ変わっていくかもしれない。

ツワノバコとしても、この動きは継続して追いかけていきたいと思います。

そして私たち町民にできることも、意外とたくさんあります。

情報を伝えること。
人を紹介すること。
DIYを手伝うこと。
チャレンジショップを使ってみること。
できたお店に足を運んでみること。

町の空き店舗は、誰か一人の力だけでは動きません。

でも、少しずつ関わる人が増えていけば、閉じていたシャッターの向こうに、新しい風景が生まれるかもしれません。


<参考:Youtube ツワノバコチャンネル>
Interview 宮田聖菜さん・畔柳知宏さん|津和野の空き店舗、どう生まれ変わる?宮田聖菜さん・畔柳知宏さんと考える“商いの入口”

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