
【インタビュー】5期目という選択の裏側で——下森博之町長が語る、町政に向き合い続ける理由

下森町長の本音、聞いてみたい!
津和野町、下森博之町長への特別インタビュー!
選挙を勝ち抜き、5期目を迎えたいま。改めて町政への想いを語っていただきました。
選挙結果の受け止めと5期目立候補への想い
5期目に向かう選挙の裏側にあった葛藤と覚悟
改めてになりますが、町長就任おめでとうございます!
まずは、今回の選挙を振り返ってですね、ぜひ率直なご感想をお伺いできればと思います。



非常に多くの支持をいただいて、本当にありがたいことだと思っております。
町議時代から何度も選挙を経験してきた中で、やはりどんな選挙でも油断はできないですし、本当にいつも選挙のたびに命がけで、負けたらもう何もかもすべて失う、それぐらいの覚悟を持って戦っていますね。
今回も同じようにその気持ちでやってまいりました。
選挙期間中はどんなことを感じられていましたか?



5期目という長期の町政になることに対して町民の皆さんがどう受け止めているのか、その点について選挙前からの私自身の関心事でありました。
選挙期間中、町内をくまなく周る中で、増えてしまった空き家や耕作放棄地を見て、人口減少の影響を肌身で感じました。
それと同時に、私が4期を通して行ってきた町政として、いい面での実績はもちろんありますが、それだけでなく、今はまだ上手くいってないところも含めて形になって現れている。
やはり空き家が増えてくると、その地域に住んでおられる住民の皆さんも「町に活力がなくなってきているな」と感じていらっしゃるかもしれない。
5期目というものに対して町民の皆さんはかなり厳しい評価をされているかもしれない。そう思いながら選挙をずっと戦ってきました。
そうでいらしたのですね。



そして、今は行政も財政的な面も含めて厳しい時代に直面しています。4期目にやったことの中で、水道料金の値上げは私自身も複雑な思いでした。全町民の皆さんに対してやはりいい影響ではありませんので。
しかし、もう水道関連の運営が成り立たないというところまで来てしまっていたのも事実です。ここは、行政の責任者として本当に腹を括って覚悟をもって決断しました。
ですが、物価高の中でさらに水道料金も上がるという事実を、町民の皆さんがどう感じておられるか。
5期目に向けて選挙を戦っていく中で、この点についても不安に感じることはありました。
数字上の多選ということへの批判もあるだろうと考える中で、数多くの票をいただけたということは、改めてになりますが本当にありがたいことだと感じています。


これまで4期に渡って町長を務められてきたからこその葛藤ですね。
5期目という選択肢はどのようなきっかけで生まれたのでしょうか。



正直なところをお話しますと、実は、2025年の年明けには後援会の幹部の皆さんに4期で終わらせていただきたいと思っているということは伝えていました。
その背景にはどんな思いがおありだったのですか?



やはり人口減少が止まらないというところが大きくありました。
16年前、『人口減少をなんとかしないと、町に将来がない』という強い志のもとで、町長になろうと決意をしました。
しかし、16年もの間、町長をやらせていただきましたが、人口減少率を見ても明らかなように、とても実績が出たとは言えないと思っています。
この事実を見ると、私が5期目をやるべきなのかということは、ずっと考えてきたことでした。
新しい町長に、新しい発想で取り組んでもらう方がいいとも思いました。
ですが、励ましを受けた言葉の中には、
「人口減少も重要だけど、あんたは16年やってきて本当に頑張ってきたじゃないか。その様々な課題の解決っていうのは誰がやるんだ」
「今ここで辞めるのは、あんたは中途半端で逃げることだ」
という言葉があったんです。
その言葉を受けて、熟慮に熟慮を重ねて、やはり5期目も頑張ろうと決心をするに至りました。


まちづくりの柱に『教育の魅力化』を掲げる理由
『教育のまち、津和野』 がつくるもの
選挙期間中に町内を回って、より人口減少を実感されたというお話もありました。人口減少は、日本の規模で見ても、もう留まることはない大きな流れですよね。
だからこそ具体的な解決策を見出すことは、とても難しいところだなと考えてしまいます。



そうですね。ただ、人口減少にも度合いがありますよね。島根県の自治体はどこも頑張っています。
その中にあって、津和野町はその減少率の度合いが激しいと捉えています。その点について大きく責任を感じているところもあります。
人口を増加させるという大風呂敷を広げるのではなく、まずは人口減少率を緩やかにしていく。そこから結果を出さないといけないということは強く感じているところです。
第1期の総合戦略でしたでしょうか、「若い女性が住みたい町づくり」という軸で戦略を立てていたかと思います。
若い女性をターゲットにするということは、人口減少に対してのアプローチから繋がったものかと思うのですが、この戦略をどう評価されて、今後どうしていこうかというのは考えていらっしゃいますか?



「消滅自治体」という言葉には思うところがありますが、ただ、分析の中の一つとしては、大事な評価だと考えています。
なぜ消滅自治体から脱却できなかったか。
そこには、20代・30代の若い女性の人口減少率が高いという津和野町の特徴が影響しています。ですので、そういう面において、20代・30代の女性の人口減少率は緩和していかないといけないと感じています。
ですが、それは20代30代に限らず、女性に限らず、この人口減少問題も含めて、まちづくりの柱として掲げている『教育の魅力化』、ここをもっともっと突き詰めて、信念を持ってやっていきたいと考えています。


人口減少だけでなく、まちが抱える様々な問題の解決の根幹に『教育の魅力化』があるということですね。



人によっては、「人づくりをすれば出ていく人間を作るばっかりじゃないか」って言う人もいらっしゃるんです。
ですが、それは別問題かなと思っています。
津和野町として、これからの町を担っていく人を育てる、人づくりというものに力を入れていきたいという思いは変わりません。
そして、やはり、人づくりに取り組む上で、教育の魅力化の過程でもっともっと郷土愛を子どもたちに抱いてもらう、このことを大事にしています。
例えば、石見神楽。昔から子ども神楽というものがあって、子どもたちはその神楽の社中に入って舞うことで石見神楽に接してきましたね。その体験と記憶があるから、大人になっても神楽をやりたくて津和野に帰ってきましたっていう方も結構いらっしゃるんです。
そのようなお話は聞きますね!



まさしく郷土愛ですよね。
ですので、そういう意味でも、流鏑馬や鷺舞、津和野太鼓など、津和野町が持ってる歴史や文化というものがUターンに繋がるのではないかとも考えています。
歴史や文化と教育を繋げるというのは、面白いですね!
津和野町のアイデンティティでもありますね。



それと同時に「教育の魅力化」というところに津和野高校の事例をはじめとして全国の方々が注目して、集まってきてくださる。
そういうものが小学校、中学校、さらには保育園においても、特色のある「津和野町ならではの教育」を展開することで、教育移住という部分も目指していけるのではないかと思います。実際に町内でも事例が生まれてきていますしね。
だからこそ、そのためには、まずは教育の魅力化のきちっとした土台ができていないといけないし、それを作りながら、UIターンの受け入れも同時に進めていく。このことを4期目から着手しているので、5期目はさらにそこを磨きかけていきたいと思っていますし、ここから人口減少対策にも結びつけていきたいという思いが私の中にありますね。
子どもたちへの教育というものの一つの側面として、「結果が出るまでに時間がかかり、実績が見えづらい」ということがあると思います。
やり続けた先に、次第に結果が見えてくる。これもまた近い未来なんでしょうね。



まさしくその思いです。
なかなか実績はすぐに出ないけれども、信念を持って続けていくことで、必ず実績を出していきたいと思っています。


ありがとうございます。重点的に取り組みたいことは人口減少が発端であるけれども、これからも教育に力を入れていきたいということなんですね。



そうですね。
実績という意味では、津和野町は「教育のまち」ということで、もう百年以上も前から掲げてきた歴史があります。
だからこそ、森鴎外や西周が代表的な人物として名前が上がるわけですが、それだけではない。現代に至るまでものすごく素晴らしい人物を数多く輩出してきているのが、この津和野町でもあります。
大庭政世さんや安野光雅さん、学者でいいますと、東北福祉大学の学長を務められた萩野浩基さんや法政大学の学長を務められた下森定さん。様々な世界で素晴らしい方々を輩出しているんですよね。



他にも、文化芸術界でいいますと桑原史成さん、林佑樹さん、ネモフィラの葉月さん、最近ではTHE W 2025で優勝されたニッチェの江上さんも津和野のご出身。
皆さん、本当にすごい才能を持った方々ですよね。
本当にみなさま、多彩な方々ですね!



現代に至るまで、本当に素晴らしい人物を輩出し続けている。
これはやっぱり教育のまち・津和野町としての一つの実績でもあると思うんです。
そして、その教育のまちというものは、著名で偉大な人物だけを作ることを目的としているわけではありません。
一人一人が、自分たちの人生のなかで、自ら課題を見つけて考えて行動し、そして困難を乗り越えて解決をしていける。
そんな「津和野町の人」を作るということが、教育の魅力化の神髄でもあると思っています。
ハードの面から見る町の発展
町民センター改修と文化ホール案について
ありがとうございます。
人口減少対策、教育の魅力化のほかに今期の4年間で重点的にやりたいことはありますでしょうか?



行政の仕事は、一つの町の発展を考えた時に大きく分けると、ソフトとハードがあります。
ソフトは、住民の皆さんの参画を中心に、住民の皆さんが主役となって共同で町を作っていくもの。
一方でハードというものは、行政の責任がより大きいものだと思います。
お金が大きくかかることでありますし、基盤整備というものはいっぺんにはできないので、計画性を持ってやってきました。
例えば、小中学校の耐震化、ケーブルテレビのFTTH化を行ってきましたし、日原地区にスーパーがなくなるということで、商業施設もつくりました。
その上で、今期4年間に残されている課題は、まずは町民センターだと考えています。文化ホールに関連する議論ですね。
今回の議会でも話題に上がっていますね。



そうですね。
防災施設になるので耐震化の事業をしていくのですが、大きく分けると3つの手法の可能性があると思っています。
一つ目は、今の町民センターに耐震化の改修をする。
二つ目は、施設をすべて建て替える。
三つ目は、一部を残して改修をして、半分程度を新しい施設にする。
大集会室があるところはもうかなり老朽化しています。耐震というよりも、新しくした方が耐用年数などを考えると有利かもしれないと考えています。
この3つの選択肢のそれぞれの事業費はどれくらいかかるのか、それがまだ何とも言えないところです。
これから設計に入ってくるのでしょうか?



そうですね。
そして、もう一つの議論は、いわゆる補助金、国の交付金です。
現実問題としてこれをもらわないと難しい側面もあります。
補助金、交付金をもらう以上は、国の条件とも照らし合わせて様々な検討を進めなくてはいけません。
そして、住民の皆さんの意見をしっかり汲んでいく。
令和8年度と令和9年度の2年間をかけて、住民の皆さんと「どういうものを実際に望むのか」について話し合いの場にて検討していきましょうということは、教育委員会と話を進めているところですね。


個人としての2026年の抱負
健康を守るということ
最後にお聞かせください!
町長個人として、町長という肩書きを抜きにしたときの2026年の抱負はなんでしょうか。



個人の夢ですかね。
端的に言うならば、毎月最低1日は完全オフの日を作ろうということですかね。
とても素敵です!



365日、1年を通して完全オフの日がないということはないですが、限られてきている生活を4期16年間過ごしてきました。
今回5期目となり、私自身、還暦も迎えました。
ちょっと今までとは体力的にも精神的にもやっぱり若くはないということも感じますし、この仕事というものは、倒れられないというプレッシャーもありまして。
その点、健康を守るということも職責の一つだということを自覚せないかんなというのを最近思い始めていますね。
本日は、取材のお時間をいただき、ありがとうございました!
また定期的にお話を聞かせてください!
今回のインタビューで、私たちツワノバコが最も印象に残ったのは、
下森町長が「成果」ではなく「未達」を正面から語っていたことでした。
5期目という事実だけを見ると、「安定」「継続」という言葉が先に立ちます。
けれど、その内側で語られていたのは、
・人口減少が止まらないという現実
・16年間やってきたからこそ見えてきた実情
・「これで良かったのか」という自問自答
という、非常に率直で、逃げのない言葉でした。
町長ご自身が、「うまくいっていないことが、町の風景として見えている」と話した上で、それでも町政の先頭に立ち続ける選択をした——
ここに、このインタビューの一番の重みがあると感じています。
また、印象的だったのは、未来の打ち手として語られたのが大型事業や派手な施策ではなく、「人づくり」だったことです。
教育、若者、関わり続けられる関係性。
数字にはすぐ表れないけれど、「今やらなければ間に合わない」と語られたその言葉は、町政を“管理”ではなく“時間のかかる営み”として捉えている姿勢そのものでした。
そして何より、このインタビューを通して強く伝わってきたのは、町政を行政だけで完結させようとしていないという点です。
「町民と一緒に背負う」
「関わる余地を残した町でありたい」
私たち町民もまた、行政に任せきりにしない。両者が建設的に関わり合うからこそのまちづくりだ、そう感じました。
ツワノバコは、町長の言葉を“評価”するメディアではありません。
この町の今を、「自分たちと無関係なものにしない」ための場でありたいと思っています。
このインタビューが、津和野町の未来について、「賛成」や「反対」ではなく、「どう関わるか」を考えるきっかけになれば——
それが、ツワノバコとしての一番の願いです。
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